64th meeting
「リーダー」
Core Talk Cafe meeting

Digest

国内外で大きな選挙が続いているタイミングということもあり、今回のテーマは「リーダー」となりました。 まずは「自分はトップに立つリーダーになるのが苦手で、リーダーである誰かのもとで働く方が好き」という意見をきっかけに、「リーダー」にまつわる経験談や日頃の感想からスタートしました。 複数の人が集まって何かするときに立てられるリーダーは何によって決まっていくのでしょうか。「リーダーの資質」というキーワードが浮かび上がります。人事のお仕事をされている方からは、就職活動ではリーダーシップ経験の有無が取りざたされることが多いけれど、本当に必要なのだろうか、という意見が出ました。「リーダーをやりたい人」には「積極性」や「発言力」があるという傾向はありそうです。逆に、どんな人にリーダーをやってほしいかという観点では、「笑顔でいる人=その場にいることが苦でなく、リラックスしている人にやってほしい」という意見や、経験的に「勉強のできる頭のいい人」にやってもらうことが多かった、など、自薦と他薦では少し傾向がちがうようです。小中学校では「優等生タイプ」が、高校では「目立ちたがり屋」や「ムードメーカー」が、大学や社会人では「リーダーをやることによるメリットを求める人」がやることが多いのではという話も出て、年代によるちがいも指摘されました。「面倒で責任が重いからリーダーはやりたくない」という感覚は、参加者のなかでも多くの方が共有していましたが、これは日本人的な傾向なのかもしれません。
では、リーダーとなった人はどのような役割を担うのでしょうか。「リーダーがいないと物事の進みが遅くなりがち」なので「問題の解決策の提案」や「意見のとりまとめ」、「最終的な判断・決定」が主な役割ではという意見と、そのように具体的な働きではなく、チーム全体の「方向性を示したり理念を体現すること」が一番の役割なのでは、という意見が出ました。後者のタイプが身近にいるという方が、そのリーダーは「実務的なことをするのではなく、理念を掲げる存在」で「この人をサポートしたいと思わせる魅力のある人」だという話をしてくださいました。この理念を掲げるリーダー像からは、その理念とリーダーを重ねあわせて、「象徴としてのリーダー」も連想されます。たとえば「天皇は日本人としての所属意識を感じさせる存在だと思う」という意見が出ました。
また、リーダーのあり方には「自ら判断して人に指示を出すタイプ」と「人に判断から委ねて任せるタイプ」の二種類があるのでは、という意見も出ました。前者はリーダー側がやりやすく、後者はまわりのメンバーがやりやすそうです。先に出た二種類とは別に、まわりの人に対して何か指示することも任せることもしない、「精神的指導者」と言われるような存在もありうる、という指摘がありました。
さらに派生して、リーダーシップは教えられるものなのだろうか、という疑問もあがりました。「リーダーシップ」はビジネス啓発書の一大ジャンルであり、テレビ番組「サンデル白熱教室」でもシリーズテーマとして取り上げられるなど、リーダーシップの学習・教育はとても盛んですが、実際これまでに出てきた「リーダー像」は習ってできるようになるものなのでしょうか。精神的指導者の例としてあがったガンジーのように、人々を「引っ張るのではなく、惹きつける」だけで影響力をもつリーダー像もあるため、リーダーというのは「能力」というより「性質」ではという意見も出ます。
改めて、リーダーとは何なのでしょうか。どんなときにリーダーが必要になるだろうか、という観点から考えたとき、「問題がなく普通に暮らしているときはリーダーはいらないのでは」「集まっている人数が多いほど必要になるのでは」という意見が出ました。しかし、蟻の行列がリーダー無しでまとまっているように、「ルールがしっかり整備されていればリーダーは必ずしも必要ではないのでは」と考えることもできます。
このへんからリーダーとリードされる側との関係についての考察に進んでいきました。たとえば先日の都知事選について、選ばれる人は知名度やカリスマによって人気を得ている人になりがちなため「誰でもいいから責任者の位置に人がいればいい」という状況になっているのでは、という残念な例があげられました。しかし、普段はルールに則っていれば問題ないような場面でも、「不測の事態に備えてリーダーを立てるのでは」という意見も出ます。危機に陥ったときにリーダーが迅速な判断と指示を出す、というイメージです。そういう意味では、最終的に責任をとるためだけのリーダーだとしても、危機管理上必要な存在なのかもしれません。しかし他方で、「リスクのための備えという"機能"的な理由であれば、人間でなくても、そういうシステムでよいのでは」とも考えられます。むしろ、「メンバーの能力発揮を最大化する」「その組織・団体のカラーをつくる」という平時のコントロールが」重要なのではという観点も出ます。議論は進んで、組織や団体の「達成したい目的の内容に応じて求められるリーダーのタイプが変わってくる」のでは、という考察も出ました。このとき、「その目的に組織の存続が含まれるかどうか」はひとつの指標になりそうです。秀吉の天下統一など、大きな目標を達成してしまった後うまくいかなくなった例もあげられました。後半になってまた「実務家タイプ」と「カリスマタイプ」が話題に上がり、両者に共通しうるリーダーの特性として「関心や能力の異なるメンバー同士のちがいを乗り越えさせるのがリーダーでは」という意見が出ました。「大きな理念や大きなメリットを提示して人々をまとめる」というリーダー像です。その流れで、リーダーとは対人的に何かをするというよりも「目指すべき目的や理念を"発見"する人」なのかもしれません。またここで、リーダーシップは訓練可能かどうか、という問いも浮上しましたが、お時間となってしまいました。
Core Talk Cafe digest

Questions

「リーダー」の向き不向きとは?
「リーダー」とは何を為す人か?それとも象徴であるか?
「リーダーシップ」は性質か、能力か?
Book Guide

Book

『君主論』 ニッコロ・マキャベリ 『君主論』 (岩波文庫)
ニッコロ・マキャベリ
岩波文庫

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